「かかりつけ医」にお尋ねしました第1回(全3回)

「かかりつけ医」にお尋ねしました
第1回 冬の感染症の予防と対策

気温が下がり、空気が乾燥してくると風邪やインフルエンザなどの感染症が流行りはじめます。今回は感染症が流行する理由、そして、予防方法をひたち太田家庭医療診療所の木村 紀志 院長にお伺いしました。全3回にわたってお届けします。

冬に風邪が流行する理由

木村 紀志 院長

※風邪とインフルエンザには症状の出方などに違いがありますが、日常生活での予防の方法は共通しています。
ここからは「風邪の予防」としてお話をします。

冬になると例年、風邪やインフルエンザが流行ることが多いのは確かです。
その原因の一つは、飛沫にあります。
咳やくしゃみによって吐き出されたウイルスの飛沫によって、人から人への感染が拡がります。ここで重要になるのが、飛沫の飛ぶ距離です。大気中の水分(湿度)が多いと飛沫の粒が大きく重くなり、遠くに飛びにくくなります。逆に乾燥している冬場は、飛沫が細かく遠くまで飛ぶので周囲に広がりやすくなるのです。

予防1「マスク」飛沫を防ぐ

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風邪の予防の原則は、ウイルスを周りに飛ばさないようにすることです。
そのためにはマスクを着けることが有効です。市販で入手しやすいものは、特にサージカルマスク(不織布のマスク)の効果が高いとされています。
マスクの目的は、相手からの感染を防ぐよりもむしろ、自分の口からウイルスが外へ飛ぶのを抑えることです。
それと、サージカルマスクの利点は「使い捨て」です。使用したマスクにはウイルスが付いている可能性がありますので、マスクを外したら処分してしまうのが一番安全です。

予防2「手洗い・手指消毒」清潔な環境

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布のマスクの場合は、使ったら毎日しっかりと洗濯することが大切です。
布も不織布も着脱の際は、どうしてもマスク自体に触れなければなりません。その時、ウイルスが手につく可能性がありますので、必ずマスクの着脱をしたときには、手をアルコールで消毒する。もしくは、石鹸で手を洗うように心がけてください。
マスクのつけ外しに限らず、様々な場所を触る手はウイルスに汚染されそれを周囲に拡げる原因になりがちです。目や口、鼻を触る前後、屋外から部屋に入ったときなどこまめに手洗いや手指のアルコール消毒を心がけましょう。
飛沫が飛んだおそれのある場所などは、消毒をしてなるべく清潔にするように意識してください。

予防3「加湿」  空気を乾燥させない

加湿器などで部屋が乾燥しにくい環境をつくることで、のどの粘膜のうるおいを保つことができます。そして、うがいでものどの粘膜を湿らせる(うるおわせる)ことができます。
のどのうるおいを保つために特別な飲料等はありません。水でこまめに、うがいをしましょう。
以前、お茶が効果的という話がありましたが、のどをうるおす意味では水でもお茶でも構いません。あと、お茶でのうがいが水よりも有効だという科学的な根拠は、見つかっていないようです。
また、のどが乾燥して粘膜に細かい傷ができると、そこからウイルスが入りやすくなります。通常、のどの粘膜は粘液(唾液など)で湿っています。粘膜から分泌された粘液がウイルスを捕らえて外に押し出して感染を防ぐ、これが「粘液によるバリア機能」です。
このバリア機能が低下することでのどに入ってきたウイルスを外に出すことが難しくなり、風邪にかかりやすくなってしまいます。

風邪予防の心得

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端的に、「〇〇を食べると感染しにくくなる」とか、「●●を飲んだから病気が早く治る」というような食べ物や薬は、風邪については基本的にありません。
あえて言うのであれば、基礎疾患(糖尿病等)がなく、十分に栄養が摂れていて、しっかりと休息もしている。いわゆる、体調を壊しにくい状態に保つことが一番有効です。
さらに、ありのままをお伝えすれば、一定以上のウイルス量が体内に侵入してしまった場合の発症は、なかなか避けられません。風邪にかからないようにするためには、「ウイルスが体内に入らないようにする」、基本的にはこれに尽きますので、今回お話した予防法を心がけるようにしてください。
新型コロナウイルス感染症に伴う「新しい生活様式」は、風邪を予防するうえで非常に効果的です。この習慣を継続していくことで風邪の予防にもつながります。

★感染症の予防方法
1.「マスク」 2.「手洗い・手指消毒」 3.「加湿」

[協力]
ひたち太田家庭医療診療所
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