移住と子育て第2回(全3回):ラウル・ピネダさん

移住と子育て第2回(全3回):ラウル・ピネダさん

プロフィール

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常陸太田市中利員町でイタリアンレストラン「楽生流(らうる)」を営むコロンビア出身のラウル・ピネダ(井坂ネストルラウル)さん。茨城の野菜に魅せられ、4年前に妻の奈巳さん、2人の子どもたちと東京から移住しました。農家の精米所を改修して開いたお店は、料理の美味しさと、ラウルさんの人柄もあって、県外からもお客さんが来るほどの賑わいぶり。今年、3人目となる赤ちゃんも誕生し、5人家族となったラウルさん夫妻に、常陸太田市への移住の経緯や現在の暮らしについて伺いました。

――来日のきっかけを教えてください。

ラウルさん:私はコロンビアの首都ボゴタ出身。イタリアやスペイン、ニューヨークでイタリア料理を修行して、東京に来ました。日本に来たのは、もともと親戚が日本にいたこともあり、興味があったからです。

都内のレストランで働いていたころ、妻と出会い、つきあうようになりました。いったんコロンビアに帰国した後もメールをやり取りしていました、そして「結婚しよう」ということになり、来日して結婚しました。

――茨城への移住を思い立ったきっかけは。

ラウルさん:東京に12年滞在し、さまざまな有名レストランで店長や料理長などを務め、メニュー開発やフードコーディネーターの仕事にも携わりました。当時、調理で使っていたのが茨城の野菜。品質の良さにひかれ、茨城産の野菜を仕入れるようになりました。茨城県にも興味がわき、いつかお店を開くとき、茨城なら間違いないと思うようになりました。

もう一つの理由は子育てです。自然のあるところで、のびのびと子どもを育てたいと思っていました。茨城出身の妻も賛成してくれて、移住を決めました。

そのころ、妻の両親が常陸太田市で家を探していて、「自分たちよりあなたたちの方が合っているんじゃない」と紹介してくれたのが、今の自宅兼店舗の場所です。もとは農家の精米所だったそうです。車で現地に行き、土地と建物を見た瞬間、「ここは住まい、ここはお店、ここは倉庫」というイメージがぱっと頭に浮かびました。私の理想は、ナポリ風の古民家っぽいお店。「ここならできる!」とすぐに決めました。

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――奈巳さんは移住に関して不安はありませんでしたか。

奈巳さん:不安はまったくありませんでした。むしろ東京を離れたかったです。東京だと、子どもを育てながら仕事をするのにちょっと息苦しく、生活しにくいと感じていました。自然を感じながら生活したいという思いがあった時、たまたまここが見つかりました。移住したらご近所さんはみんないい人。東京にはなかった近所づきあいがあり、一緒に子どもを見てくれます。

――移住してしばらくは東京と行ったり来たりだったそうですね。

ラウルさん:2018年8月に東京から常陸太田に引っ越しましたが、当時、東京でもお店を2店舗任されていました。そこで東京のお店の後任を探しつつ、自分で常陸太田市にお店を開店し、少しずつ始めました。最初の1年は金・土曜日は常陸太田市のお店を開き、それ以外は東京で仕事をしていました。だから365日働いていましたね。

そのうち今の自分のお店が忙しくなりました。1年目はみんなにお店を知ってもらって、食べてもらうことに一生懸命でした。やがてお店が評判になり、水戸や大子、県外からもお客さんが来たり、「もっとお店を開けてほしい」と言われるようになったりしました。そこで週4日開けなくてはと思い、東京のお店を2021年1月に退職して、木・金・土・日と開けるようになりました。ですが、なかには水曜日などが仕事休みの方もいます。「行けない」と残念がられることもあり、スタッフと相談して、今年4月からは週6日お店を開けています。現在、定休日は火曜日のみ。月と水はランチ(11時00分~15時00分)だけで、木~日はランチに加えてディナー(17時00分~21時00分)も営業しています。曜日が合わなくて来られなかったお客さんが「やっと来れた」と喜んでくれる。それがすごくうれしいですね。

――移住してよかったこと・苦労したことは何でしょう。

ラウルさん:よかったことはここでお店を構えることができて、お客さんが食べて満足して、笑顔で帰り、リピーターになってくれること。それが最高にうれしいです。

お店を出すまでは正直悩みました。東京だったら一人暮らしの人が多く、気軽に歩いて食べに来てもらえます。でもここだと、車でなければ来られません。東京から子どもを連れて移住して、お店ができるかどうかは一種の賭けでした。今では、ご近所の方はもとより、車での往復に時間をかけてでも来てくださるお客さんがたくさんいます。それはもう感謝してもしきれないほどです。

大事にしているのはホスピタリティ。お客さんが来店したら、「いらっしゃいませ!」と元気な声で迎え、笑顔でコミュニケーションするようにしています。そして「料理はいかがでしたか」と聞いて、参考にしています。スタッフにも、お客さんを母親のように尊敬して対応してほしいと伝えています。自分の心や情熱すべてをこめないとお店は安定しないと思ってやってきました。だからこうしてみなさんに支持してもらって伸びてきたことは、本当に最高なことです。

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苦労したことは、言葉かな。東京で日本語を覚えましたが、ここ(常陸太田)に来たら方言が分からなくて、もう一度勉強しなければならない感じですね。

奈巳さん:不便なところはたくさんありますけど、それよりも得るものが多いです。東京は高い建物がたくさんあって、空が狭くて、みたいな感じですけれど、ここは広くて、土のにおいを感じることができます。緑で目が癒されたり、子どもの五感が発達するとか、そういった良さがあります。

――お子さんとの日常はいかがですか。

ラウルさん:現在、子どもが0歳、小2、小6の3人。仕事は朝から晩まで忙しいけれど、なるべく子どもと一緒の時間は作りたいですね。ここだと子どもと一緒にサッカーや水遊びをすることができます。東京だと難しかったでしょう。また子どもがお店を手伝ってくれることもあります。3人のうち、だれかお店を継いでくれるとうれしいですね。

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子どもと一緒にいるときは、あまり子どもを押さえつけず、本人のやりたいことをやらせてあげたい。もちろんダメなことは教える必要がありますが、なるべく「これはダメ」とは言いたくないですね。これはコロンビアスタイルかもしれません。妻の考えも尊重しながら、あまりストレスをかけないよう、のびのび育てたいです。

――移住を考える人に伝えたいことはありますか。

ラウルさん:ぜひみなさんに、茨城や常陸太田の良さを知ってもらいたいです。田舎だと不便で生活できないと思うかもしれませんが、そんなことはありません。逆にチャンスがたくさんあります。例えば新しい家を建てるための補助金など、移住者を支える制度があります。外国人でも個人事業など、やる気さえあれば、何でもできます。

そして市役所もそんな人たちに協力的です。私がお店を始めるときも、市役所には大変お世話になりました。最初のころ、いろんな手続きが分からなくて、週1回は市役所に顔を出しましたが、職員の方は「いつでも聞きに来てください」と優しく対応してくれて、大変助かりました。

――今後の抱負を教えてください。

ラウルさん:日本に来て、この素敵な国で、文化や言葉も一から学び、日本と日本人のスタイルをリスペクトしながら、少しずつ階段をのぼってきました。これからも一生懸命がんばり、高齢化が進むこの地域を盛り上げていきたい。地元の特産品を使ったお店もやってみたいと思っています。

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イタリアンレストラン 楽生流(らうる)
〒313-0105 茨城県常陸太田市中利員町2975-2
HP: https://restaurant-85753.negocio.site/

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