「歯医者さん」にお尋ねしました第1回(全2回)

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6月4日から6月10日の1週間は「歯と口の健康習慣」です。子どもに乳歯が生えてくると、「一生健康な歯でいてほしい」と願う親御さんは多いことでしょう。そこでお子さんの歯をむし歯から守るために、ホームケアのポイントや初めての歯科受診のタイミングについて、大森歯科・口腔外科の大森翔英院長にお話を伺いました。(全2回)

第1回:子どものむし歯を防ぐホームケア
第2回:初めての歯科受診のタイミングは?

◇子どもの口に関心を持って

子どもがむし歯にならないために一番大事なことは、お父さん、お母さんが、お子さんの口に関心を持つことです。なぜむし歯になるか、どうすればむし歯にならないかを知り、歯科医院で定期的にチェックするとともに、ご家庭で口の中を掃除する習慣をつけることが大切です。
むし歯の原因は明らかになっています。口の中のむし歯菌が多くなること、歯が弱いこと、甘いものを食べること、この三つが合わさるとむし歯になってしまいます。逆に言うと、この三つをコントロールして許容範囲内に収めれば、むし歯になりにくくなります。

◇食事のとり方、気をつけて

子どものむし歯の原因の8割以上は、食事のとり方で決まります。歯の表面は、歯が溶け出す脱灰(だっかい)と再石灰化を繰り返します。口の中が酸性に偏ると脱灰し、唾液の働きで中和されると再石灰化が始まります。そのため歯を硬くするには、再石灰化の時間を長くすることです。なるべく決まった時間に食事をとり、1日の中で脱灰する時間を減らしましょう。逆に、間食が多いと、再石灰化が追いつかず脱灰状態が続くため歯は柔らかくなってしまいます。
酸性度が高い食品をとりすぎても歯が柔らかくなります。意外に思われるかもしれませんが、健康によさそうな果物や黒酢、栄養ドリンクや乳酸菌飲料なども酸性度が高く、とり方によってはむし歯につながるので、偏らないよう注意が必要です。その点、昔の食事のとり方は理にかなっていることが多く、例えば食後にお茶を飲むと中和を助けてくれます。そのような視点で食べ物の種類や順番に気をつけてみてください。

◇たくさんゆすがなくても大丈夫

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お子さんの歯磨きには、フッ素入りの歯磨き粉を使いましょう。

フッ素には歯を硬くする効果があります。そして歯磨き後は、しっかりゆすがなければと思われるかもしれませんが、今の歯磨き粉は飲んでも害にならないため、口に残っていてもかまいません。むしろ、たくさんゆすいでしまうとフッ素成分が出ていってしまうことの方が心配です。
私たち親世代は昔、甘い歯磨き粉をなめて叱られた経験がありますが、今のお子さんには、なめさせておくと口の中にフッ素成分が残るのでよいかもしれません。お子さんが寝る前にぐずって歯磨きができないときは、甘い歯磨き粉を塗って寝かせてしまってもかまいません。

◇糸ようじで空気を入れ替えて

歯磨きのときは必ず糸ようじ(デンタルフロス)をしてください。ただの糸でもホルダーつきのものでもどちらでもかまいません。乳歯の場合、むし歯になる場所はだいたい決まっていて、ほとんどが歯と歯の間からです。これは糸ようじを使う習慣があまりないからだと考えています。とくに奥歯の間がむし歯になることが多いので、上下左右の奥歯の間4か所は、親御さんが必ず糸ようじを通してあげてください。
糸ようじをする理由は、汚れのたまりやすい歯と歯の間の空気を入れ替えられるからです。口の中の汚れの正体は、ばい菌のかたまりです。そして病原性を持つむし歯菌や歯周病菌は、酸素があるところではあまり生きていけません。歯と歯の間などに汚れがたまると酸素が届かなくなり繁殖するのです。

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ばい菌が繁殖する日数は48時間なので、1日1回歯磨きと糸ようじをすればむし歯になりません。夜寝ている間は唾液の洗浄効果が働かないので、歯磨きの時間は寝る前が適切です。さらに少しフッ素を残した状態にすると、ばい菌が繁殖しにくくなり、歯も硬くなります。余力があれば朝起きたときにも歯磨きをすると、寝ている間に繁殖したばい菌を除くことができます。
「歯磨き」という言葉も誤解されやすいですね。歯の表面を磨いてきれいにするというイメージが浮かびますが、実際はばい菌の数を減らす除菌というのが正しいです。そのあたりのイメージを変えていただくことも重要だと思っています。

◇仕上げ磨きは親の仕事

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お子さんの口の中の状態をよく把握していただきたいので、仕上げ磨きは必ずしてあげてください。たまに親御さんがむし歯になったお子さんに、「ちゃんと磨かなければだめでしょう」と言っていたりしますが、お子さんがちゃんと磨くのはまだ難しいです。むしろちゃんとしなければならないのは親御さん。仕上げ磨きは親の仕事ととらえていただきたいです。
欧米の歯科先進国では、子どもが9歳になるまでは絶対に仕上げ磨きをするようにといわれています。健全な永久歯の歯列が完成するのは小学6年生ぐらいなので、私は中学生の男の子にも「お母さんに仕上げ磨きしてもらってね」と伝えています。

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さらに永久歯ですが、最初に6番という奥歯が生えてきます。親御さんは、前歯が抜けてはじめて大人の歯が生えてくると思いがちですが、すでに奥に6番が生えていることがよくあります。ですので、奥歯が見えてきたらそこを磨いてあげてください。生えたての永久歯は非常に柔らかいので、1回むし歯になると進んでしまいます。生えてきたタイミングでしっかりケアしてあげることが重要です。子どもの年齢ごとに生える永久歯はだいたい決まっており、その年齢で一番新しく生えた歯が一番むし歯になりやすい傾向があります。例えば6歳のときは奥歯の6番が、7歳のときは前歯の1番がなりやすいので、そこを重点的にケアしてあげてください。

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